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MSP(マネージドサービスプロバイダ)とは?MSPをビジネスで活用するための基礎知識
2020.09.01
MSP(マネージドサービスプロバイダ)とは、複数のマネージド情報技術(IT)サービスを提供するITサービス事業者です。MSPの多くは、オンサイトサービスではなく、自社のネットワーク経由で、リモートによりサービスを提供しています。
MSP(マネージドサービスプロバイダ)とは
MSP(マネージドサービスプロバイダ)とは、主に企業に対し、複数のITサービスを提供するサービス事業者のことです。
ITサービスを自社ですべて抱えることは、今や現実的ではありません。例えば、サーバエンジニアがいないと、サーバの運用ができない・セキュリティエンジニアがいないとセキュリティ対策ができない、というとき派遣社員や外注で賄うということが考えられます。
MSPは一歩進んで、サーバのサービスを業者側で用意して、サービスの形式で提供します。セキュリティの場合も同様に、サービス自体を提供します。ハードウェア・ソフトウェア・インフラを、サービスの形式で提供し、同時に運用・監視など総合的にサービスを提供できるのがMSPです。
MSPの仕組み
MSPの仕組みは、SLAという契約とサブスクリプションモデルの料金体系、そして技術的にはリモートサービスであることが重要な要素となります。これらの要素により、ユーザー企業に多くのメリットがもたらされるサービスとなっています。
・ITサービスを売るビジネスモデル SLAで品質保証
MSPは、SLA(Service Level Agreement=サービス品質契約)を企業と締結し、各種のITサービスを提供します。
SLAに書かれるのは
– サービスの種類
– サービスの提供時間
– サポートの提供時間や提供までにかかる時間
– 担当人員
– 障害の解消までの時間
などで、サービスの一定の品質の提供を約束して保証します。
SLAに書かれたサービスをユーザー企業はサブスクリプションで購入するのが一般的です。サブスクリプションの形で料金を支払うとすると、一定の高い品質のITサービスが、月々あるいは従量制の料金体系で、月当たりあるいは使ったデータ量にあわせて料金を支払うことになります。
一からインフラやハード・ソフトウェアを購入して運用するより、比較的安価で購入できることになります。
・リモートでサービス提供
かつてはマネージドサービスというと、ネットワークインフラ・セキュリティの運用代行など、1種類のサービスを専門業者が提供する、という形式が主流でした。現在はネットワーク・ストレージ・サーバ運用・セキュリティ・ITサポートなどのサービスをユーザーの要望で組み合わせ、リモートで提供するサービスが現在一般的です。
MSPのサービスは、高速インターネットを活かしてオンラインかつリモートで提供されているのが一般的で、企業に派遣社員や外注が詰めることはありません。リモートでMSPが障害を解消する、エンドユーザーにサポートを提供するなどのサービスを提供しています。
大手ベンダーのマイクロソフトや、アマゾンなどがクラウドプラットフォームを開発し、これを通じたマネージドサービスを提供しています。
さらに、こうしたマイクロソフトAzureやアマゾンAWSなどのクラウドプラットフォームを利用する中小のベンダーが、ユーザー企業にマネージドサービスを提供するようなマネージドサービス形態も増えてきています。
MSPを活用するメリット
MSPを活用するメリットは
- 比較的に安価でITサービスを導入・運用できること
- 高い品質のサービスを受けられること
にあります。 サブスクリプションモデルは、初期投資額を抑えることができます。長期間で考えても人件費がかからない点で、大幅にIT関係の費用を抑えることができると考えられます。
また、サービスの品質も自前で用意するよりも高いサービス品質とすることができます。自前で高品質のITサービスを構築し、運用する際には相当に投資が必要です。MSPは相当額の投資をして専門人員を用意し、高品質のサービスを提供できるようにしています。比較的に安価で高品質なので、費用対効果を考えると、MSPのサービスを利用することはユーザー企業にとって合理的なことです。
さらに、もう少しマネージドサービスプロバイダを活用するメリットを深掘りしてみましょう。
安心のシステム運用監視体制
マネージドサービスプロバイダに任せると、システムの運用監視体制は安全性・安定性が向上します。そもそもネットワークを通じたシステムの運用監視サービスは、MSPが早くから取り組んできたことで、企業よりよほど業務ノウハウに長けているといってよいでしょう。
システム運用監視体制は、自社で構築すると、運用監視に必要なソフトウェア・ハードウェア、それに人員数と人の質をそろえるのは非常に難しく、なおかつ人のスキルや、SW/HWの違いでばらつきが出がちです。
これが経験の長いマネージドサービスプロバイダに任せると、最新の運用ツールを使う・専門人員が最適な体制を構築するなどのメリットがあり、サービスが途切れることなく安定したシステム運用が可能になります。
特に途切れずサービスを提供しなければならない予約サイトやネットショップの運営などには、MSPの利用が合理的と考えられます。
システム脆弱性に対する適切な対応
マネージドサービスでシステムの脆弱性に対応することも合理的です。脆弱性への対応は、常に監視し、セキュリティホールを見つけて行うなど、人手と工数のかかることですが、マネージドサービスプロバイダに依頼すると、これらの心配はなくなります。
アウトソーシング全般にこれらの人手と工数の解決はある程度提供できますが、マネージドサービスでは、専門人員が高度なツールを使い、システム脆弱性に対応するのが通常です。ツール・分析レポートもマネージドサービスプロバイダが専門的観点から利用・作成してくれるので、人手不足を補う以上に、脆弱性への対応力を高めることができます。
さらに専門人員からの脆弱性に対するSW/HWやインフラ改善の提案を受け入れると、より脆弱性からくるリスクのコントロールが十分なものになります。
作業工数の大幅削減
IT人員を確保し、運用監視・障害対応などを行うと、工数が相当かかることです。アウトソーシングを単に行うだけでは、自社の工数は削減できず、それと同時に人件費もドラスティックに減らすことができません。
しかし、MSPの場合、サービスとして運用監視や障害対応を行うことになるため、自社に工数をカウントしなくてよいのです。
工数削減・人件費の削減も大幅に行うことができます。
しかも、今MSPは自動化ツールや、AI技術を使うことにも積極的であり、MSPにサービスを委託する効果が出やすく、またサービスフィーも価格競争が適度に行われています。工数の大幅削減効果は、働き方改革の動きの中でも大変魅力的であるといえるでしょう。
レポートによる問題箇所の発見
MSPのサービスの中でも、レポートは専門人員により高品質なものにできる点で大きなメリットが出やすいポイントです。
脆弱性分析などのセキュリティレポート、障害報告、インシデントレポートなど、自社で行うと面倒であると同時に専門性が低くなりがちなものです。これらの運用上の課題には注力しないと、外部からの攻撃などのIT課題にとどまらず、業務の効率性・収益性などにも悪影響が出てしまいます。
MSPに任せると、高度な専門性や経験をもった人員が、単なるツールからのレポートにとどまらず、分析・解析結果もつけてレポートしてくれるので、客観的な要改善点・問題点がわかるようになります。
改善までの道筋・手順もあわせてつけてくれるようなサービスもあり、利用価値が高いと考えられます。
障害対応の速さ
障害対応の早さもMSPに依頼するメリットの出やすいところです。MSPは障害専門チームを持っているところも多く、経験と専門性を活かし、最新のツールで障害対応をしてくれます。
障害対応も工数がかかるところですし、人手不足があると対応が遅くなりがちです。IT人員は、社内にいると障害対応だけに100%注力はできないことが通常です。障害対応と通常業務との人員の切り分けをするまでの余裕はありません。
障害対応が遅いことは、業務の効率性の足を引っ張るだけでなく、優秀な職員がIT環境の問題点から離職してしまう原因にすらなるのが現代の経営環境です。
専門の障害対応チームをもつMSPに障害対応を任せて、早期に障害から復帰できることおよび障害が通常業務を圧迫しないようにすることは、会社の働く環境整備の一部といってもいいでしょう。
ダブルキャストMSPの導入までの流れ
メリットの多いMSPの利用ですが、MSPの一つであるダブルキャストのマネージドホスティングサービスは、サーバ・ストレージの運用監視、障害対応、バックアップやセキュリティサービスをフルマネージで提供するサービスです。
では、具体的にどのようにして導入するのか、以下ではMSPの導入をお考えの方に向けて、導入の流れをご紹介します。
1.システム構築前のヒアリング
ダブルキャストMSPは、MSPの利用によるメリットを最大限引き出せるよう、あなたの会社で最適なシステム構築の提案を行います。そのため、ヒアリングからMSP導入の作業を始めます。
会社で使っているアプリケーションとアプリケーションを使った業務内容の把握を行い、特に監視が必要な項目についてもヒアリングで整理していきます。MSP内で利用するリソースや、サービス提供に向けてMSPでのチーム体制などについても青写真を作っていきます。
2.システムの設計
ヒアリングの内容に基づいて、システムの設計を行います。システム仕様書を作成、顧客とチェックをし、意図しているシステム仕様となっているか確認します。
システムの設計と同時に、例えば必要なサーバやバーチャルマシン・データベースの増設や、ハードウェアの拡張・ネットワークの改修の必要などもあれば仕様書に加えて作業手順書の作成を並行して行っていきます。
顧客の意図するマネージドサービスを提供するため、万全の準備をシステム設計段階で整えていきます。
3.サーバの構築・稼働テスト
システム仕様書に従い、マネージドサービスに利用するサーバの構築や稼働テストを行います。必要に応じて、ネットワークの構築も同時に行うことがあります。顧客の独自のアプリケーション、ミドルウェアをインストールしていきますが、もちろん設定はMSPにお任せです。
稼働確認のためのテストもMSPが行います。サーバの構築にあわせてインストールすべきアプリケーションがあれば、アプリケーションの稼働に必要なテストも同時に行います。
4.運用開始・障害対応の流れ決め
いよいよサーバの運用を開始しますが、運用に先立ってMSP側での障害対応の流れを顧客と一緒に決めておきます。
障害対応の流れをあらかじめ決めておくことができれば、運用が始まった後障害にいつでも対応できるので、それだけ顧客の作業負担を減らすことができます。
障害対応のコミュニケーションに顧客側の社内ルールなどがあれば、MSP側でもこれに対応してオペレーションを構築する・障害報告のルートや様式を決めておく・人員をアサインしておくなどの準備をして運用に臨みます。
まとめ
今までご紹介したように、MSPは、会社のIT業務を専門性の高い人員と最新ツールで肩代わりし、工数・コストの削減に大いに効果を発揮します。複数のサービスを提供することが通常ですので、システムの運用監視にとどまらず、セキュリティ運用・監視、各種レポートの作成などにも対応できます。
さらに、これらの専門性の高い業務をSLAにおいて定義された品質で提供すると同時に、社内でのITサービスより一般的に高品質なものにすることができます。
社内ITサービスの障害対応の迅速さ、年々技術的に高度になる外部からの攻撃に耐えられるだけのセキュリティ体制の確保など、企業のIT課題は重要な経営課題といってもよいですが、専門家によりこうした課題に対応できるのがMSPです。有効に利用されることをおすすめします。